講義名 微分方程式特論第一(Special
Lectures on Differential Equations I)
開講学期 前学期 単位数 2--0--0
担当 井上 淳 教授
【講義の目的】
Euclid空間上の関数の性質を調べるのが実解析学、複素変数の関数の性質を調べるのが複素解析学と言えよう。
では、例えば、Hamiltonの4元数を変数とする解析学はあるとしたらどうあるべきだろうか?
この講義では、考える基礎体を可算無限個のGrassmann生成元をもつFr\'echet-Grassmann「代数」とする
ときの解析学の有り様を述べる。
これは、Feynmanの問題や、それを含む偏微分方程式系の新しい取り扱いに必要で、
単なる「既存結果の一般化」を求める考えからの所産ではないと確信しているからである。
もし時間が許せば、Efetovから始まるランダム行列理論への奇変数の応用を述べる。
このような内容は特に若い人々の勉学に都合が良いだろう。古典を勉強しながら、この新しい設定下での
結果がどうなるかと考えていけば、それが想定外の新しい結果を産み出すかもしれないという
楽しみがあるからである。
例えば、Nirenberg-Trevesの局所可解性の話を単独のものから偏微分方程式「系」にするためには
どうしたらよいか、Stein, Fefferman,Tao等々の実解析の仕事のスーパー空間上のcounterpartはどうなる、
と考えるとワクワクしながら勉強できるのでは?
この方法の具体的応用例のほとんどは私の独断と偏見に基づく計算といえる?!
「名人、危うきに遊ぶ」とも「君子、危うきに近寄らず」とも言う。
さあ、何かしでかしたいと思う諸君、どうする!
【講義計画】
○ {何故、このような基礎体もどきが必要なのか?}
○ {Feynmanの問題について}
○ {Dirac方程式とWeyl方程式の導出} %{ Fourier変換論入門}
○ {Weyl方程式に対応した古典力学とは何か?}
○ {Weyl方程式の基本解の「経路積分的」表示}
○ {Fr\'echet-Grassmann algebra $\mathfrak{R}$とスーパー空間$\mathfrak{R}^{m|n}$}
○ {スーパー空間上の微積分学}
○ {スーパー空間上の線形代数学}
○ {スーパー空間上のFourier変換とその応用}
○ {SUSYQM=supersymmetric Quantum MechanicsとWitten指数等}
【教科書・参考書等】
特別無し。講義中に幾つかの本とか論文を引用する。
【関連科目・履修の条件等】
未履修問題が起こったら各自勝手に補うこと。
【成績評価】
授業中に出したレポート問題等を見て判断する。原則としてやる気を見せれば
それがたとえ演技であっても、大いに良しとするつもりである。
【担当教官から一言】
知識を持った後に捨てて、考えられること。知識がなければ得る努力をできること。
(囲碁や将棋の定石を勉強した後、精神だけを理解し、結果としての形は
忘れられること。古い人々の成功体験などにやたらと縛られないこと。)