講義名 数学特殊講義B(Special courses on advanced topics in Mathematics B  科目コード:ZUA.E332

開講学期 3Q 単位数 2--0--0
担当 大矢 浩徳  准教授:本館3階334A号室(内線2544)


【講義の概要とねらい】
  本講義の主要なテーマは量子アフィン代数の有限次元表現論である.量子アフィン代数とはアフィンリー環と呼ばれる無限次元リー環の普遍包絡環の q-類似と見られるホップ代数であり,その有限次元表現については 1980 年代中頃からこれまでに非常に多くの研究がなされている.しかし,量子アフィン代数の有限次元表現達たちは複雑で面白い構造を持っており,今もなお基本的な未解決問題が残っていたり,新しい構造が発見されているような状況である.本講義では, 今もなお難しい問題の中から特に既約表現の q-指標を求めるという問題に着目し,基本的な事項から現在研究が行われている内容までの解説を行う.
  本講義前半のねらいは,量子アフィン代数の有限次元表現論において現在ではよく知られている内容 (最高ウェイト理論,q-指標,Kazhdan-Lusztig アルゴリズムによる既約 q-指標の計算等) を通して,表現論において頻繁に現れる考え方を解説することにある.本講義の後半では,Fomin-Zelevinkyによって導入されたクラスター代数の量子アフィン代数の表現論への応用,および異なる Dynkin 型の量子アフィン代数の表現論の間の類似性等,既約表現の q-指標の計算に関連して現在も研究が行われている内容の解説を行う.また,時間が許せば量子アフィン代数の Borel 部分代数,シフトされた量子アフィン代数といった量子アフィン代数から派生して現在も研究が行われている代数の表現論について解説をする.これらを通して,現在の本分野の研究の様子の一端に触れていただくことが本講義後半のねらいである.

【到達目標】
・量子アフィン代数の有限次元既約表現の分類の結果を理解する
・量子アフィン代数の有限次元表現の q-指標の定義を理解する
・量子 Grothendieck 環の構成,および量子 Grothendieck 環における Kazhdan-Lusztig アルゴリズムの手続きを理解する
・クラスター代数の量子アフィン代数の表現論への応用を理解する

キーワード】
量子アフィン代数, q-指標, 量子 Grothendieck 環, Kazhdan-Lusztig アルゴリズム, クラスター代数

【学生が身につける力】
専門力

【授業の進め方】
通常の講義形式で行う.また,適宜レポート課題を出す.

【授業計画・課題】

第1回 量子アフィン代数の有限次元既約表現の分類 1
第2回 量子アフィン代数の有限次元既約表現の分類 2
第3回 量子アフィン代数の有限次元表現の q-指標 1
第4回 量子アフィン代数の有限次元表現の q-指標 2
第5回 量子アフィン代数の有限次元表現圏の量子 Grothendieck 環の様々な構成 1
第6回 量子アフィン代数の有限次元表現圏の量子 Grothendieck 環の様々な構成 2
第7回 量子 Grothendieck 環における Kazhdan-Lusztig アルゴリズム 1
第8回 量子 Grothendieck 環における Kazhdan-Lusztig アルゴリズム 2
第9回 クラスター代数の量子アフィン代数の表現論への応用 1
第10回 クラスター代数の量子アフィン代数の表現論への応用 2
第11回 クラスター代数の量子アフィン代数の表現論への応用 3
第12回 異なる Dynkin 型の量子アフィン代数の表現論の間の類似性 1
第13回 異なる Dynkin 型の量子アフィン代数の表現論の間の類似性 2
第14回 量子アフィン代数の Borel 部分代数, シフトされた量子アフィン代数の表現論 1
第15回 量子アフィン代数の Borel 部分代数, シフトされた量子アフィン代数の表現論 2


課題は講義中に指示する

【教科書】
特になし

【参考書、講義資料等】
T. Nakanishi: Cluster Algebras and Scattering Diagrams, Part 1: Basics in Cluster Algebras; arXiv:2201.11371

【成績評価の基準及び方法】
レポート課題 (100%) による

【関連する科目】
MTH.A201 : 代数学概論第一
MTH.A202 : 代数学概論第二
MTH.A203 : 代数学概論第三
MTH.A204 : 代数学概論第四
MTH.A301 : 代数学第一
MTH.A302 : 代数学第二

【履修の条件(知識・技能・履修科目等)】
代数学における基本事項を修得していることが望ましい.