講義名 数学最先端特別講義F(Special lectures on current topics in Mathematics F) 科目コード:MTH.E636
開講学期 4Q 単位数 2--0--0
担当 天野 政紀 静岡県立大学経営情報学部 助教
【講義の概要とねらい】
本講義の概要は,Klein群とその変形についての基本的な理論の解説である.特に重要な概念は以下の通りである:
Klein群,擬等角写像,タイヒ
ミュラー空間.Klein群の変形をRiemann面の擬等角変形として捉えることで,Riemann面の変形空間であるタイヒミュラー空間との関係を見
ることができる.これらの理解のために,まず今後扱う双曲型Riemann面と双曲幾何について学習する.さらにこの被覆変換群となるFuchs群と,こ
の一般化となるKlein群の性質とRiemann面との関係を見る.次にRiemann面の変形を与える擬等角写像の定義をし,Fuchs群と合わせて
タイヒミュラー空間の記述を行う.最後にタイヒミュラー空間の複素構造や,Klein群を利用しての境界表現,その他タイヒミュラー空間論の応用を与え
る.
本講義のねらいは,Klein群の変形に関する基礎概念と基礎理論の習得である.講義の中に登場する双曲型Riemann面やKlein群の
不連続領域は,複素解析学の諸分野の中でも,双曲幾何学,複素力学系など分野に関連する.また,Klein群の変形理論と密接な関係を持つものがタイヒ
ミュラー空間論という重要な研究分野であり,互いに多くの応用が知られている.本講義は,理論の理解の他に,テーマとしてこれら低次元の複素多様体をベー
スとした研究に対する見解を広めてもらうことを考えている.
【到達目標】
・ほとんどのRiemann面に双曲計量を導入できることと,対応する各Fuchs群の性質を理解できること.
・Klein群の定義を知り,その不連続領域とRiemann面との関係を理解できること.
・擬等角写像の二種類の定義を理解し,Riemann面の変形を表すことを理解すること.
・Klein群の変形空間とタイヒミュラー空間の関係とこれらの応用を知ること.
【キーワード】
双曲幾何,Riemann面,Fuchs群,Klein群,擬等角写像,タイヒミュラー空間.
【学生が身につける力】
専門力
【授業の進め方】
通常の講義形式による講義を行う。また、適宜レポートを課す。
【授業計画・課題】
第1回 | 一次分数変換 |
第2回 | 双曲幾何学 |
第3回 | 被覆の理論 |
第4回 | 普遍被覆面と一意化定理 |
第5回 | 双曲型Riemann面とFuchs群 |
第6回 | Fuch群の性質(基本領域,双曲計量) |
第7回 | Fuch群の性質(清水の補題,traceと双曲的長さ) |
第8回 | Klein群の定義と性質 |
第9回 | Klein群の極限集合と不連続領域 |
第10回 | 擬等角写像(幾何学的定義) |
第11回 | 擬等角写像(解析的定義とベルトラミ方程式) |
第12回 | Klein群の変形空間 |
第13回 | タイヒミュラー空間の表現 |
第14回 | タイヒミュラー空間とKlein群 |
第15回 | タイヒミュラー空間論の応用 |
課題は講義中に指示する
【教科書】
使用しない
【参考書、講義資料等】
今吉洋一,谷口雅彦:タイヒミュラー空間論(日本評論社)
【成績評価の基準及び方法】
レポート課題(100%)による.
【関連する科目】
MTH.C302 : 複素解析第二
【履修の条件(知識・技能・履修科目等)】
MTH.C302 : 複素解析第二 を履修していることが望ましい.