講義名 数学最先端特別講義C(Special lectures on current topics in Mathematics C)科目コード:MTH.E633
開講学期 2Q 単位数 2--0--0
担当 高桑 昇一郎 首都大学東京大学院理工学研究科 教授
【講義の概要とねらい】
この講義では幾何解析において代表的な2つの話題を取り上げる.ひとつは調和写像でありもうひとつは Ricci flow
である.調和写像は調和関数,測地線,極小曲面の一般化であり,幾何解析において最初に発展した.Ricci flow は多様体において標準的な
Riemann 計量を求めるために Richard Hamilton によって1982年に導入されたRiemannian
計量に対する非線形偏微分方程式である.両方の話題について基本的な結果を解説する.
この2つの話題を通して幾何解析においては問題を解くために解析的な方法と幾何的な方法が統一的に用いられていることを理解する.
【到達目標】
・偏微分方程式の基本的な手法を扱えるようになること.
・調和写像や Ricci flow の解の基本的な例の多くを扱えるようになること.
・調和写像とその heat flow に関する基礎理論を理解すること.
・Ricci flow の基礎理論を理解すること.
【キーワード】
Riemann 多様体,曲率テンソル,測地線,エネルギー汎関数,調和写像,熱方程式,Einstein-Hilbert 汎関数,Ricci flow,Ricci ソリトン
【学生が身につける力】
専門力
【授業の進め方】
通常の講義形式で行う.また,適宜レポート課題を出す.
【授業計画・課題】
第1回 | Riemann 幾何の基礎知識 |
第2回 | 曲線の長さと測地線 |
第3回 | 測地線の存在定理 |
第4回 | 曲線のエネルギーの第1変分公式 |
第5回 | 曲線のエネルギーの第2変分公式 |
第6回 | 測地線の幾何学への応用 |
第7回 | 調和写像の定義と例 |
第8回 | 調和写像の存在定理 |
第9回 | 調和写像の幾何学への応用 |
第10回 | Hamilton の Ricci flow の概要(定義,背景,歴史) |
第11回 | Ricci flow のいろいろな解 |
第12回 | Ricci flow の短時間解の存在と一意性 |
第13回 | 曲率テンソルに対する発展方程式 |
第14回 | Ricci flow の収束 |
第15回 | Ricci flow の幾何学への応用 |
課題は講義中に指示する
【教科書】
使用しない
【参考書、講義資料等】
・J.ヨスト,ポストモダン解析学,シュプリンガー・ジャパン,2012
・西川青季,幾何学的変分問題,岩波書店,1996
・B.Andrews-C.Hopper, The Ricci flow in Riemannian Geometry, Lect. Notes in Math. Vol. 2011, Springer, 2011
【成績評価の基準及び方法】
レポート課題(100%)による.
【関連する科目】
ZUA.B301 : 幾何学第一
MTH.B302 : 幾何学第二
MTH.B331 : 幾何学続論
【履修の条件(知識・技能・履修科目等)】
多様体論,多変数関数の微分積分,関数解析