講義名 数学最先端特別講義A(Special lectures on current topics in Mathematics A)科目コード:MTH.E631
開講学期 2Q 単位数 2--0--0
担当 土岡 俊介 東京大学大学院数理科学研究科 特任助教
【講義の概要とねらい】
表現論は、対称性を研究する数学の一分野である。
この講義では、そのうちで、群の (通常) 線形表現を扱い、特に対称群の表現論を
以下の 3 つの視点から説明する。
・群や環の表現論の一般論
・対称関数の理論
・組合せ論
対称群の表現論という具体例を通じて、以下の 3 つを理解する事が、この講義のねらいである。
・表現論の一般論についての理解を深める。
・数学においては、一見異なる分野 (ここでは、対称群の表現論と組合せ論)が実は密接に関係している事を見る。
・代数的組合せ論の初歩的な材料に親しみ、対称群の表現論に付随する種々の量が実際に計算できるようになる。
【到達目標】
本講義を履修する事により、以下の知識と能力を習得する。
・対称群の (通常) 既約表現が分割によってパラメトライズされる事を理解する。
・対称群の既約表現の具体的・抽象的構成法を理解する。
・ヤング図形と、それに関する組合せ論的アルゴリズムを使う事ができる。
・対称関数環とシューア関数に慣れ親しむ。
・リトルウッド・リチャードソン規則やコストカ数などの代数的組合せ論的対象に親しみ、計算できるようになる。
・対称群の表現論が、対称多項式環の性質と密接に関係する事を理解する。
【キーワード】
対称群、表現論、指標、対称関数、リトルウッド・リチャードソン規則、コストカ数、
ロビンソン・シェーンステッド・クヌース対応、ヤング図形、半標準盤、
シュペヒト加群、鉤長公式、フロベニウス指標公式、マシュケの定理、プラクティック・モノイド、圏論化
【学生が身につける力】
専門力
【授業の進め方】
通常の講義形式による講義を行う。また、適宜レポートを課す。
【授業計画・課題】
第1回 | 群の線形表現の定義と群環 |
第2回 | 通常指標と直交性 |
第3回 | マシュケの定理とウェッダーバーンの定理 |
第4回 | 誘導表現とフロベニウス相互律 |
第5回 | ヤング図形入門 |
第6回 | ヤング対称子による対称群の既約表現の構成 |
第7回 | ヤング加群とシュペヒト加群 |
第8回 | 15 ゲームとプラクティック・モノイド |
第9回 | ロビンソン・シェーンステッド・クヌース対応と鉤長公式 |
第10回 | ロビンソン・シェーンステッド・クヌース対応にまつわる対称性 |
第11回 | リトルウッド・リチャードソン規則とコストカ数 |
第12回 | 無限変数対称関数環とシューア関数 |
第13回 | フロベニウス指標公式とピエリ公式 |
第14回 | オクンコフ・ヴェルシックの方法 (その 1): A 型アフィン・ヘッケ環 |
第15回 | オクンコフ・ヴェルシックの方法 (その 2): 分岐則と柏原クリスタル構造 |
課題は講義中に指示する
【教科書】
Bruce E. Sagan, The Symmetric Group, GTM 203,
William Fulton, Young Tableaux, London Mathematical Society, Student Texts 35.
【参考書、講義資料等】
講義資料は、講義中に配布する。
【成績評価の基準及び方法】
レポート課題の解答状況による。
【関連する科目】
MTH.A301 : 代数学第一
MTH.A302 : 代数学第二
MTH.A403 : 代数学特論C
MTH.A404 : 代数学特論D
MTH.E431 : 数学特別講義A
【履修の条件(知識・技能・履修科目等)】
履修の条件は特に設けないが、関連する科目を履修している事が望ましい。