講義名 数学特別講義P(Special lectures on advanced topics in Mathematics P) 科目コード:MTH.E439
開講学期 3Q 単位数 2--0--0
担当 前川 泰則 東北大学大学院理学研究科数学専攻 准教授
【講義の概要とねらい】
本講義の主要なテーマは,流体力学の基礎方程式として知られるNavier-Stokes方程式の定常解の安定性解析である.Navier-Stokes
方程式は19世紀中頃に非圧縮性粘性流体の運動を記述する方程式として提唱された非線形偏微分方程式系であり,非線形系であることと非局所性からその厳密
な解析は難しい場合が多く,今なお未解決の問題が多く残されている.本講義では,非有界領域におけるNavier-Stokes方程式のあるクラスの定常
解の存在と安定性について近年の進展を含めて解説する.
Navier-Stokes方程式を題材に,非線形偏微分方程式の解の存在や安定性に対
する一つの典型的な解析手法について学ぶことを目的とする.また,線形性と非線形性の釣り合うスケール臨界性に着目しつつ,流体力学的な直観と数学的な構
造がどのように対応するのかについても理解できるよう配慮し,実解析や関数解析がどのように役立っているか学ぶ.
【到達目標】
・Navier-Stokes方程式の定常解の存在と安定性について,線形化作用素の解析に基づいた標準的な議論を理解すること.
・Navier-Stokes方程式のスケール不変性と解の挙動の関係について理解すること.
・回転物体周りの流れの数学的構造について理解すること.
・軸対称旋回流の持つ特徴的な数学的性質について理解すること.
【キーワード】
Navier-Stokes方程式,渦度場,線形作用素のスペクトルとレゾルベント,定常解の存在と安定性,スケール不変性と解の漸近挙動,軸対称旋回流
【学生が身につける力】
専門力
【授業の進め方】
通常の講義形式で行う.また,適宜レポート課題を出す.
【授業計画・課題】
第1回 | Navier-Stokes方程式に関する用語の定義等について |
第2回 | 様々な厳密定常解(1) |
第3回 | 様々な厳密定常解(2) |
第4回 | 2次元回転物体の周りを流れる時間周期的Navier-Stokes流の存在(1) |
第5回 | 2次元回転物体の周りを流れる時間周期的Navier-Stokes流の存在(2) |
第6回 | 2次元回転物体の周りを流れる時間周期的Navier-Stokes流の存在(3) |
第7回 | 2次元単位円の外部領域における厳密定常解の安定性(1) |
第8回 | 2次元単位円の外部領域における厳密定常解の安定性(2) |
第9回 | 2次元単位円の外部領域における厳密定常解の安定性(3) |
第10回 | 2次元単位円の外部領域における厳密定常解の安定性(1) |
第11回 | 2次元単位円の外部領域における厳密定常解の安定性(2) |
第12回 | Burgers渦の安定性:導入 |
第13回 | Burgers渦の2次元安定性 |
第14回 | Burgers渦の3次元安定性(1) |
第15回 | Burgers渦の3次元安定性(2) |
課題は講義中に指示する
【教科書】
使用しない
【参考書、講義資料等】
「ナヴィエ-ストークス方程式の数理」 岡本久 著 (東京大学出版, 2009年); 「Nonlinear partial
differential equations. Asymptotic behavior of solutions and
self-similar solutions. Progress in Nonlinear Differential Equations and
their Applications, 79」 M.-H. Giga, Y. Giga, and J. Saal
(Birkh{\"a}user, Boston, 2010)
【成績評価の基準及び方法】
レポート課題 (100%) による。
【関連する科目】
ZUS.F301 : 関数解析学
【履修の条件(知識・技能・履修科目等)】
特になし