講義名 数学特別講義C第二Special Lectures on Mathematics CU)
開講学期 後学期 単位数 2--0--0
担当 
宮地 秀樹 非常勤講師(大阪大学大学院理学研究科 准教授 )


【講義の目的】
リーマン面の標識付き複素構造の全体を表すタイヒミュラー空間は他分野にわたり大
変重要な空間である.この講義では曲面上の複素構造の上位構造である特異点付きユー
クリッド構造を考える.実際には特異点付きユークリッド構造の変形とその退化につ
いて解説する.変形空間はタイヒミュラー空間上のファイバー空間の全空間と自然に
同一視できる.タイヒミュラーの定理によれば,閉曲面から有限個の点をのぞいた曲
面の複素構造の変形は特異点付きユークリッド構造の変形によって表すことが出来る
ため,特異点付きユークリッド構造の変形・退化の研究は非常に重要である.


【講義計画】
タイヒミュラー空間などの講義内で用いる言葉の定義および諸性質を復習した後,特
異点付きユークリッド構造の空間を導入する.次に,特異点付きユークリッド構造の
変形空間を測地線カレント(geodesic currents)の空間への埋め込みを説明し,埋め
込みにおける閉包の幾何的な特徴付けを説明する予定である.時間が許せば極値的長
さによる退化との関係を説明したい.


【教科書・参考書等】
タイヒミュラー空間の基本的なことは
今吉洋一・谷口雅彦 ,タイヒミュラー空間論,日本評論社
が詳しい.また特異点付きユークリッド構造の変形空間については
プレプリント
 Moon Duchin, Christopher J. Leininger, Kasra Rafi,
 Length spectra and degeneration of flat metrics
 http://front.math.ucdavis.edu/0907.2082
に沿って解説する.


【関連科目・履修の条件等】
リーマン面などの基本的なことを習得していることは望ましいが,
予備知識はなるべく仮定しないで解説する.


【成績評価
出席およびレポートで評価する。

【担当教員から一言】
この話題は幾何学(トポロジー)と(複素)解析学が複雑に絡み合い非常に魅力的な
ものです.その辺りの楽しさ・面白さを伝えればと思います.