講義名 数学特別講義E第二(Special
Lectures E II)
開講学期 後学期 単位数 2--0--0
担当 井川 満 非常勤講師(京都大学大学院理学研究科 名誉教授)
【講義の目的】
記号力学系とは,有限個の文字を両方向に無限に並べてできる数列の集合をとりあげ,
その上の運動としては数列を左に移動させるという写像をとる,極めて簡単な力学系である.
他方,いくつかの凸な物体の外部における幾何光学の法則にしたがって質点が運動する
場合の軌道を考える.この軌道のうち,過去の無限時間から未来の無限時間に亘って物体に
捕捉されるような軌道全体は,記号力学系に書き直せる.
この事実を用いて,素な周期軌道はどのように分布しているかを調べる.
最終目的は,素な周期軌道の分布に関しては,素数定理の類似が成立することを示すことである.
【講義計画】
1.記号力学系
2.いくつかの凸な物体の外部における幾何光学の軌道.
3.物体に捕捉された軌道全体は,記号力学系に対応する.
4.記号力学系のゼータ関数
5.素数定理の類似
【教科書・参考書等】
井川満
記号力学系入門ー周期軌道に対する素数定理の類似
龍谷大学科学技術共同研究センター,2007
【関連科目・履修の条件等】
なし
【成績評価】
レポートなどにより
総合的に評価
【担当教官から一言】
自然数の中に,素数はどの位あるのか,
その分布状況を示す定理の一つとして,
素数定理がある.
いくつかの凸な物体の外部における幾何光学の周期軌道の分布に関し,
これと類似の定理が成り立つことを示すのに,
記号力学系という極めて簡単な力学系が有用であることは興味深い.
私はこの問題について素人であるが,散乱理論の研究より
自ずとこの問題に興味を持つようになった.
素人のごく易しい講義内容となるであろう.