講義名 応用解析第二(Applied Analysis II)
開講学期 8学期 単位数 2--0--0
担当 堤 誉志雄 非常勤講師(京都大学大学院理学研究科 教授)


【講義の目的】
フーリエ解析は,Plancherelの定理などにより,L^2空間においては簡明かつ強力な理論である.
しかし,p乗可積分空間L^pでは,Plancherelの定理に代わる別の定理が必要となる.

この授業では,Plancherelの定理の代役を果たすCalder\'on-Zygmundの被覆定理
(または,分解定理)と,その応用としてフーリエ掛算作用素のL^p有界性定理および
ソボレフ空間H^s_pについて解説する.
これらの準備をした後で,最近のColliander-Keel-Stafillani-Takaoka-Taoによる,
I-method(非線形波動・分散型方程式に対する,解の大域ア・プリオリ評価方法)を解説する.

【講義計画】
1.Marcinkiewiczの補間定理
2.Calder\'on-Zygmundの被覆定理とフーリエ掛算作用素のL^p有界性
3.ソボレフ空間
4.非線形シュレディンガー方程式の大域解 (I-method について)

【教科書・参考書等】
教科書は使わないが,参考書として以下の文献をあげておく.

[1] 猪狩惺,「実解析入門」,岩波書店.
[2] 柴田良弘,「ルベーグ積分論」,内田老鶴圃.
[3] J. Bergh and J. L\"ofstr\"om, "Interpolation  Spaces, An Introduction", Springer.
[4] C.D. Sogge, "Fourier Integrals in Classical Analysis", Cambridge Univ. Press.
[5] T. Tao, "Nonlinear Dispersive Equations, Local and Global Analysis",
  CBMS Regional ConferenceSeries in Mathematics, No. 106, AMS.

【関連科目・履修の条件等】
ルベーグ積分とフーリエ解析の基本事項を前提として授業を進める.

【成績評価】
出席,レポート

【担当教官から一言】
解析学に現れる証明は初学者にとって,一つ一つのステップは(計算は複雑であ っても)特に
難しくはないが,全体としてみると何をやっているのかよく分からない,と言うことが多い.
たとえば,担当教員の個人的な経験では,学生時代に初めてCalder\'on-Zygmundの被覆定理を
勉強したとき,証明どころか定理の主張自身が何を言っているのかよく分からなかった.
今回の授業では,フーリエ解析の古典的な部分と最近の非線形偏微分方程式への応用について,
全体と細部のバランスを取りながら解説することを試みたい.