かつて山形の知人から 「博多は寒い!」 と言われたことがある。
こちらとは比べものにならぬほどの雪と気温の低い地方の人間がそう言うのは、
吹き抜ける強い北西風から体感的に感じたからに違いない。

しかし、その寒い風が吹き、 海が時化 (しけ) れば時化るほど、
漂着量が増えるワカメを求めて、 糸島の海岸を歩く回数も増えてくる。

うねる波に乗って浜にたどり着くワカメの多くは、 ちぎれたものがほとんどだけど、
その切れ端 2 〜 3 片でもみそ汁 1 回分には十分足りるし、
運が良ければ根づいた岩ごと運ばれてくる大物を見つけることもあり、
それには、たたいて食すと抜群にうまい茅カブが付いていることも …。

だから、 いかに寒くて強い風にさらされても、 かぶる波を受けるにしても、
足しげく通ってしまうほど、 "冬の味覚" に引き寄せられる魅力。
それがワカメ採りである。


(リビング福岡 2002年2月16日号、品原 克幸 「週末探検」 ワカメ)

挿絵 (「寺山海岸より船越を見る」と、漂着した大きなワカメの絵)
に付いてゐる