講義名 数学特殊講義G(Special courses on advanced topics in Mathematics G  科目コード:ZUA.E341
開講学期 2Q 単位数 2--0--0

担当 山本 修司 慶應義塾大学理工学部 特任准教授


【講義の概要とねらい】
Riemannゼータ関数やDirichlet L関数の非正整数における値の計算は,Euler以来の古典的なテーマである.新谷卓郎は錐分割という卓抜なアイディアによって,これを一般の総実代数体に拡張する結果を得た.最近,坂内健一氏・萩原啓氏・山田一紀氏らとの共同研究において,新谷の結果を「代数トーラス族の同変層係数コホモロジー」という枠組みで再解釈し,より自然な理解を与えることに成功したので,それらのことについて解説する.また同様の枠組みを使って,p進L関数の正整数における値をp進ポリログで表す公式(有理数体におけるColemanの定理の拡張)についても述べたい.
講義の中心となるテーマは「新谷生成類」というある種のコホモロジー類を具体的に構成することである.古典的な有理数体の場合,新谷生成類はt/(1-t)という有理関数に他ならない.このように,関数の自然な一般化としてコホモロジー類を考えることは,今回のケースに限らず,古典的な定理・公式の拡張を考える際に有用となる可能性がある.この講義を通じてその視点を獲得し,コホモロジーを扱う方法の実例とともに学んでほしい.

【到達目標】
・有理数体のLerchゼータ関数の特殊値が,一つの生成関数で記述される仕組みを理解すること
・総実代数体のゼータ関数に対する新谷の仕事の概要を理解すること
・総実代数体に付随する代数トーラス族,および同変コホモロジーのCech複体による記述を知ること
・新谷生成類の構成,およびその等分点における特殊化の計算法を理解すること
・総実代数体のp進ポリログの構成,およびp進L関数の値との関係を知ること

【キーワード】
総実代数体,Lerchゼータ関数,Hecke L関数,新谷生成類,p進L関数,p進ポリログ

【学生が身につける力】
専門力

【授業の進め方】
通常の講義形式で行う.また,適宜レポート課題を出す.

【授業計画・課題】

第1回

以下の内容を解説する予定である.

・有理数体のLerchゼータ関数の特殊値に関する古典的結果
・総実代数体のゼータ関数の特殊値に関する新谷の仕事
・代数トーラス族およびその同変コホモロジーの記述
・新谷生成類の構成
・新谷生成類の等分点への特殊化の計算
・p進L関数とp進ポリログの構成およびそれらの関係


課題は講義中に指示する

【授業時間外学修(予習・復習等】
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。

【教科書】
使用しない

【参考書、講義資料等】
Bannai et al.: Canonical equivariant cohomology classes generating zeta values of totally real fields, arXiv:1911.02650
Bannai et al.: p-adic polylogarithms and p-adic Hecke L-functions for totally real fields, arXiv:2003.08157

【成績評価の基準及び方法】
レポート課題 (100%) による.

【関連する科目】
MTH.A301 : 代数学第一
MTH.A302 : 代数学第二
MTH.A331 : 代数学続論

【履修の条件(知識・技能・履修科目等)】
特になし