講義名 数学最先端特別講義H(Special lectures on current topics in Mathematics H)  科目コード:MTH.E638
開講学期 3Q 単位数 2--0--0
担当 西納 武男 立教大学理学部数学科准教授

【講義題目】
複素トーラス上の正則曲線とトロピカル幾何学


【講義の概要とねらい】
本講義では複素多様体上の正則曲線について解説する。滑らかな複素多様体は抽象的に定義する上では易しいが、具体的に調べようとするとその滑らかさのために手掛かりを見つけるのが困難なことがしばしばある。多様体の特異点はそれ自体複雑な構造を持ち多様体の研究の障壁となりうるが、一方で多くの情報が集中しているとも考えられ、様々な研究の手掛かりとなりうる。このような考え方が正則曲線の研究にいかに適用されるかを具体例を通して見る。
はじめにトーリック多様体の初歩について触れたのち、2次元複素トーラスを例に特異トーリック多様体への退化を具体的に構成する。この場合を例として、退化した多様体上の正則曲線の情報とトロピカル曲線と呼ばれる組み合わせ的な対象の対応を考察し、それに基づいていかに元の多様体の情報が得られるかを学ぶ。

【到達目標】
・トーリック多様体の初歩を理解すること。
・多様体の退化の具体例を理解すること。
・退化した多様体上の正則曲線の構成を理解すること。
・簡単な正則曲線の変形について理解すること。

【キーワード】
複素多様体、正則曲線、トーリック多様体。トーリック退化、複素トーラス、変形理論、障害

【学生が身につける力】
専門力

【授業の進め方】
通常の講義形式で行う. また, 適宜レポート課題を出す.

【授業計画・課題】

第1回 トーリック多様体の初歩について 1
第2回 トーリック多様体の初歩について 2
第3回 複素多様体のトーリック退化について 1
第4回 複素多様体のトーリック退化について 2
第5回 退化した多様体上の正則曲線の構成について 1
第6回 退化した多様体上の正則曲線の構成について 2
第7回 トロピカル曲線の初歩について 1
第8回 トロピカル曲線の初歩について 2
第9回 トロピカル曲線の初歩について 3
第10回 変形理論と障害について 1
第11回 変形理論と障害について 2
第12回 変形理論と障害について 3
第13回 正則曲線の場合の変形の障害の具体的な計算について 1
第14回 正則曲線の場合の変形の障害の具体的な計算について 2
第15回 正則曲線の場合の変形の障害の具体的な計算について 3


課題は講義中に指示する

【教科書】
使用しない

【参考書、講義資料等】
特になし

【成績評価の基準及び方法】
レポート課題 (100%) による.

【関連する科目】
MTH.A405 : 代数学特論A1
MTH.A406 : 代数学特論B1
MTH.B505 : 幾何学特論E1
MTH.B506 : 幾何学特論F1

【履修の条件(知識・技能・履修科目等)】
幾何学における基本事項を修得していることが望ましい