講義名 数学特別講義E第一(Special Lectures on Mathematics E I)
開講学期 前学期 単位数 2--0--0
担当 長友 康行 非常勤講師(九州大学大学院数理学研究院 助教授)
【講義の目的】
4次元球面におけるASD接続のモジュライ空間の構成法である
ADHM構成法を紹介することをひとつの目的とする。
また、この構成法をLie群の表現論という立場から見直すことにより
高次元化することにも焦点をあてたい。
【講義計画】
まず4次元多様体上のPenrose型のツイスター空間を導入する。
とくに標準的な計量をもつ4次元球面におけるツイスター空間を議論する。
Penrose対応、すなわちディラック型の微分作用素の解空間と
ツイスター空間上の層係数コホモロジー群との対応を
理解した後、ADHM構成法に進む予定である。
また、この理論の高次元化も紹介したい。
そこで登場するのが、超ケーラー多様体、および四元数ケーラー多様体である。
これらの多様体上ではホロノミー群の簡約による
ベクトル束の既約分解を利用して、
さまざまなディラック型の微分作用素が定義されるが、
そのうち最も基本的と思われる二つに関連する幾何学を紹介したい。
すなわち、「ツイスター切断」と「運動量写像(切断)」に関する幾何学である。
時間が許せば、これらの幾何学とASD接続のモジュライ空間との関連についても
話を進めたい。
【教科書・参考書等】
茂木勇、伊藤光弘、「微分幾何学とゲージ理論」(共立出版、1986)
小林昭七、「接続の微分幾何とゲージ理論」(裳華房、1989)
M.F.Atiyah,N.J.Hitchin and I.M.Singer,
「Self-duality in four-dimensional Riemannian geometry」,
Proc.Roy.Soc.London Ser.A.
362 (1978), 425--461,
M.F.Atiyah,
「Geometry of Yang-Mills Fields」
Lezioni Fermiane, Scuola Normale Superiore,
Pisa (1979)
S.M.Salamon,
「Quaternionic K\"ahler Manifolds」,
Invent.Math. 67 (1982), 143--171
【関連科目・履修の条件等】
多様体に関する基礎知識、たとえば「多様体の基礎」(松本幸夫著、東京大学出版会)
で取り扱われている知識を前提とする。
また、接続の理論、リー群SU(2)の表現論、複素多様体
に関する予備知識も仮定するが、
講義内で多少は復習する予定である。
【成績評価】
レポートによる。
講義時間中に問題を出すので、これを解いてもらうことになろう。
【担当教官から一言】
ADHM構成法は現在においても繰り返し議論される対象であるし、
また4次元の幾何学を理解することは今後とも依然として重要であるので
これらに関して興味を持っていただければ幸いです。