講義名 数学特別講義C第二Special Lecture C II
開講学期 8学期 単位数 2--0--0
担当教官 熊谷 隆 非常勤講師(京都大学数理解析研究所 助教授)


【講義の目的】

グラフや多様体の上に性質のよい自己共役作用素が与えられたとき、対応する熱核や
調和関数の大域的性質を調べることは、空間の大域的構造を把握する上で大変重要で
ある。本講義では、ハルナック不等式と呼ばれる調和関数の性質と、熱核評価、さらに
様々な解析的不等式との関係を調べ、これに関連した解析的・確率論的手法を学ぶ。

【講義計画】
議論の本質が分かりやすいように、グラフ上の離散ラプラス作用素・多様体
上のラプラス
作用素に話を限定する予定である。設定、様々な解析的不等式の説明の後、放
物型ハルナック
不等式と、ある種の熱核評価の同値性を示し、これらと同値な条件を調べる。
さらに、これ
らの不等式から、対応する確率過程のどのような大域挙動を導き出すことがで
きるかを調べる。
放物型ハルナック不等式を満たすグラフの例として、フラクタル的なグラフを
紹介し、ハル
ナック不等式が、もとの図形のある種の幾何学的変換に関して安定性を持つこ
とにも言及する。
時間が許せば、ある種の確率モデルの長時間挙動の解析への応用についても述べたい。

【教科書・参考書等】
本論に関するテキストはないが、グラフ上の離散ラプラス作用素については1)を、
古典的なハルナック不等式と熱核等の関係については、2)を参照して欲しい。
1)
熊谷隆、 確率論(共立出版)第3章
2) L. Saloff-Coste, Aspects of Sobolev-Type inequalities, Cambridge
Univ. Press,
     2002.


【関連科目・履修の条件等】
確率論、関数解析の基礎事項を習得していることが 望ましいが、予備知識は
なるべく仮定しないで解説する.

【成績評価】
出席およびレポートで評価する。

【担当教官から一言】

実解析学と確率論の接点、その広がりを伝えることができればと考えています。